近年、釣りゲームは「ホラー」が熱い。
それまで釣りゲームといえば「なんかパッとしないイメージ」がつきまとうジャンルであり、ゲーマーはもちろん、釣り人がやるゲームという印象はまるでなかった。
というか、そもそも釣り人は釣りゲームをやらない。
かつてのスーパーファミコン時代では新興ジャンルとして子どもたちにも人気があったが、リアルな釣りゲームの時代になってからは、むしろ釣り人からの人気は大してない。
しかし近年は海外を中心に、インディーゲームメーカーが「釣り」×「ホラー」を題材にしたゲームを立て続けに小さなヒットへと導いている。
釣り人であってもやりたい釣りゲーム。リアルな釣りゲームには世界観もなく、ストーリー性もないものが多いうえに刺激が足りない。しかしホラーゲームにはそれがある。オンラインでのチームプレイが可能であったり、ストーリー性があったり、謎解き要素があったりと、近頃の釣りゲームは現実の釣りにはない魅力を備えた新境地へと達しようとしているのだ。
そんな中、国内のインディーゲームメーカーがついにホラー型釣りゲームを開発した。
その名も「ウミガリ」。
釣りとはいってもスピアフィッシング、つまりモリで魚を突くというゲームであり、ルアーフィッシングや餌釣りの類ではない。
ところが、このスピアフィッシングゲームはとても面白い。なぜなら、大半の釣り人はスピアフィッシングをやらないからだ。
だから、普段釣りをしている人でも十分楽しめるゲーム性。そしてストーリー性がある上に、不気味なデザインと奇妙なチープさが入り乱れる新種の釣りゲームである。
釣り人目線で釣りゲームをするというのは、かなり厳しい目線でゲームを見ることになるが、体験版が出ているので早速ちょっとだけプレイしてみた。
チラズアートが送る「ウミガリ」

チラズアートといえば、国内のインディーホラーゲームでは名の知れた存在である。
近年のホラー系インディーゲームといえば「8番出口」が誰もが知る存在だが、このチラズアートの作品も負けてはいない。
特に有名なのは「夜勤事件」であり、格安インディーゲームとしてはかなりの大ヒット。
その結果、なんと映画化にまでこぎ着け、近日公開予定である。ホラー好きの道北貧釣としても大変楽しみだ。ちなみに「8番出口」の映画はまだ見られていない。配信まで待たなくてはならないかもしれないのが辛い。
しかしゲームなら家でプレイできる。チラズアートの「ウミガリ」体験版が出たということで、早速プレイしてみた。
結果としては「これはオモシロイ」。
ホラーゲーとしての要素はそこまで強くなく、おそらくクトゥルフ神話系のストーリーラインを汲んだものだろう。
しかしまず「船を使ったスピアフィッシング」というゲームシステムが面白い。むしろホラー要素がなくとも、このシステムだけで十分すぎるほど楽しめてしまうし、おそらく価格も従来の格安設定と考えると、体験版では物足りず、本編プレイが待ち遠しいレベルだ。
船からのスピアフィッシングは釣り人にとって未知の領域
このゲームのシステムでは、主人公は魚を釣って生計を立てる漁師として物語を進めていく。
そこで重要となるのが「船」と「モリ」である。
基本的には船に乗り、海に出て、魚をサイトで見つけ、そのままモリを発射する。
この仕組みで魚を捉えていくわけだが、ホラーゲーらしくモリが突き刺さるとドバッと血が出る仕組みになっている。最初はけっこうビックリする。そんなに血なんか出ないぞ、魚は。
しかし、これが恐ろしいほど狩猟本能を刺激する。そして、操船しながらモリを構え、不気味な巨大魚と並走しながらモリを発射する時などはとても興奮する。とてもチープな格安ゲームとは思えないほどオモシロイのだ。
なぜこんなに面白いかというと、これがスピアフィッシングで、しかも船を操舵しながら行うからだ。
操船+スピアという仕組みが狩猟性を上げているのと同時に、そもそも船からのスピアフィッシングはほとんどの人間が経験のない未知の釣り方なのである。
そもそも釣りゲームを釣り人がやらないのは、本物の釣りとそっくりにされているせいで「じゃあ普通にリアルで釣りするよ」となるからである。なにせ現実で釣りをしたほうが何倍もオモシロイからだ。
ところが、この操船+スピアフィッシング+巨大魚狩りというシステムは、現実の釣りではまず味わえない。とくに現実でのスピアフィッシングは、漁師として行うならまだしも、趣味でやる日本人はほとんどいない。なにせ、かなり残酷な方法だからだ。
しかしゲームであればできる。現実にはできない釣り方をゲームの世界で行えるし、現実では残酷すぎると思ってもゲームなら可能だ。釣り人の魚に対する狩猟本能を刺激しまくり、現実では不可能な遊びができるせいか、インディーのチープなゲーム画面にもかかわらず、やたらと魚をモリで突きたくなってしまうのである。
特に船を操船しながらというのが良い。スピアフィッシングというと素潜りでやるゲームが他にもあるが、そちらよりもゲーム性が高く、かなり難しいのがオモシロイ。船を魚と並走させるテクニックがゲーム性を高めているし、魚の進行方向を読んで操船しながらモリを放つのは、釣り人のみならず、実際にスピアフィッシングをやる人間ですらできない、ゲームならではの面白さだ。
漁師体験ができる国産ゲーム
本作でもう一つ重要なのが、漁師シミュレーターとしての側面だ。
このゲームでは船を動かすのに、まず燃料が必要。そして、手に入れた魚で得られる報酬の一番重要な使い道が、この船のガソリン代なのだ。
これがリアルというか、漁師感が思い切り強い。稼ぐ金は燃料代となる上に、燃費がすこぶる悪い。
そして、なんと燃料が途中で尽きると、ほぼリスタート状態になるのである。
つまり、燃料を常に考え、港に戻るまで計算に入れて漁をしなければならないあたりがゲーム性を異常に上げており、燃料切れが致命的にアウト。これが難しい。
漁に夢中になりすぎて燃料が切れると、それまでの漁が全て無駄になる。これが漁師ゲーのおもしろさ。普通の釣りゲーにはない高いゲーム性を生み出している。
というか、普通のリアル系釣りゲーって、正直燃料切れも起きないし、釣れないと困るとか、ストーリーが進まないとか一切ない。ほんとに釣りするだけで、それってそう、見てて面白くない。
釣りもぶっちゃけやってる本人はオモシロイですけど、べつに人が釣りしてるのを見るのって、そんなに面白いもんでもないんです。
リスクとかないですからね。「これ釣れなかったらヤバいんじゃないか…」みたいなサバイバル系の流れがあれば面白いけど、そんなストーリー性って普通の釣りには存在しないんで。
その点、「釣れないとストーリーが進まない」「燃料切れが致命的にキツい」「ガソリン代を稼ぐために魚を釣る」「釣れないとガソリンだけ消費して大赤字」というゲーム性があり、なおかつ普通の釣り人がまずやらない船上スピアフィッシングで、しかも巨大魚相手というのがいい。そしてホラー要素があるので大変にヨキ。どうやらクトゥルフ系というのも個人的に好きなポイントだ。
面白そうなので発売が楽しみ
国産釣りホラーゲーが出る上に、ゲーム性がかなり良いので発売が楽しみ。お値段もチラズアート作品はいつも安いので気軽に遊べそう。釣りに行けない時にやるゲームとして最高だ。

