氾濫した河川に釣りに行ったら異世界についた~1~

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釣り小説

4月1日。

エイプリルフール。

世間が欺瞞と嘘にまみれたこの日、僕は顔を洗ったあと鏡を見つめ、そこにいるもう1人の自分に問いかけていた。

「こんなことでいいのか?ええ?」

世間では薄汚いジョークまがいの嘘にまみれていたこの日を僕は前々から苦々しく思っていた。何がエイプリルフールだ。まともなのは僕だけだ。

唯一の正気を保つために何をすべきか考えながら、服をきて、泥水のようなインスタントコーヒーで現実の苦味を思い出す。ついでにポストから引き抜いた大量の支払い用紙に目をやる。どれもこれも自分宛で、目的は支払いのさいそくばかり。だが、いずれも嘘ではない。本物。だからこそ、信じられるし、恐怖すらする。

外は晴れている。

特に仕事もないこの日、まともでいるためにやるべきことは決まっていた。

それに気がついた僕は、二階の作業場に戻る釣り竿と自作ルアーを手に取る。

釣り。

僕とって、生きることの唯一の証明。

ぽんこつ車の荷台に釣具をおしこめ、僕は嘘まみれの現実と別れをつげるべく、車のキーをひねり、死ぬほどハードボイルドな気持ちで車を走らせる。それはもうワイルドな気分で。トミーリージョーンズとスティーブンマックイーンを足してウォッカをぶちまけたような顔をしてバックミラーごしに自分を確認してみたが、どう見てもメガネをかけた笑い飯のロン毛のほうだった。ロンググットバイ。

 

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9:10分 現地到着

 

今回はハードボイルドでいく。

世間のエイプリルフールの風に流されることがないよう気を引き締めつつ、僕は現場に付いた。

驚いた。河川の氾濫は酷いと聞いていたが、それがこれほどのものだったとは。

天塩川水系のとある支流に入った僕が車から降りると、とてつもない轟音が聞こえてくる。

そこに、いつもの静寂さを湛えた水面はなかた

雪解けであふれかった泥水が茶色いうねりとなり川の中に溢れかえり、まるで土砂がそのまま押し流されているようにも見えた。

しかし、それでもエイプリルフールのくだらない現実に戻る気にはなれない。

僕は準備していたロッドを手に川辺に立つ。

流速は相当早い。

押し流される石や枝がレースでもしているかのように目の前を通りすぎていく。

ここではだめだ。

諦めきれず、歩いて上流へと移動していく。

すると、砂防堤の下に水のよどみがある。

ここだ。

僕はすぐさまアップクロス用に調整した中川鉄男改を投入。

着水後、カウント1、2、3、4,5,6、7,8,9,10,11・・・・

おかしかった。

すでに20秒を数えたが、いまだラインは止まらない。

たかが支流で10gのメタルジグがカウント20を超えるなんて、絶対にありえない。

そこでスペイルをおこし、ロッドを持ち上げた途端、僕は異変に気がついた。

上がらない。

イメージでは頭上にまで高々と持ち上げるはずだった7フィートのロッド。

しかし、現実には僕の手は胸元以上は上がらなかった。そればかりか、突然手にコンクリートを載せられたかのように重くなる。

これは一体?

何がおきているかわからない内に、ルアーが吸い込まれた水面が山の様に盛り上がり、割れた。

巨大な魚。

いや、魚かどうかすらわからない。

銀色の巨体。全長はおよそ5メートルはあろうか。水面から空中に浮かび上がりったその魚の縁にかかった僕の鉄男が助けを求めているようだった。

まずい。

僕はいそいでロッドをはなそうとしがた、すで遅かった。

まるで縛られたかのように固まった体ごと、水中へと引きずり込まれる。大量の泥水が喉を通り抜ける感触。視界が暗くなり、泡と茶色の風景をみつめるまもなく、僕の意識は暗転した。

 

12:15分 水中からのシ者

 

コメント

  1. 今日は。ムーが愛読書のワイズストリームです。
    トラウトの異世界選ばれた者しか入れない(引っ掛けてくれない)のですね。安定した入り方が分かれば、ニジマス族に加勢して、資源やハイテクノロジー提供について独占の条約を結びたいところです。
    ブラウンとの戦いもマス属はルアーをひどく恐れているようですので、簡単に倒せそうですね。

    • αトラウト より:

      はじめまして、月ムー僕も好きですよ。
      トラウト達の異世界に選ばれたわけで、今後はどうやってこっちから第二の天塩川に行くのか問題ですねこれ。
      ニジマス族はやけに高度なテクノロジーを有していました。知能指数はやけに高いです。
      泣く子も黙るブラウン達はニジマス族以上に凶暴な種族のようで、どうやら支配権争いをしているようです。怖い。