氾濫した河川に釣りにいったら異世界についた~3~

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釣りを恨んでも、僕の頭はやはり釣りのことばかりを考える。

なんせ、僕が釣りさえしなかったら、こんな事にはならなかったのだ。いや、この世界にやってくることを、僕はどこかでわかっていた。

つまり、どうようもない釣りバカ。ついでに、思い出したくもない記憶も考える。なら、ただのバカだ。なら、頭が良いやつはどうなのかといえば、現実から目をそらすのが上手いのだ。とくに、自分の過去から。

それにしても、なぜあいつは。あの巨大魚は僕の過去を知っていたのかが気になる。探偵?ふざけるなよ。そんなこと、どこにでも言いふらしたつもりもないし、SNSだって黙ってるっていうのに。

ちなみに、僕のSNSでの職業は「無色ニートの借金王」だが、それはどうでもいい。というか、こうなるともう止まらない。冗談じゃすまない記憶ばかりがあふれてきて、笑えもしない。

嫌な記憶はいつも封印して、くだらないジョークですませたい僕の人生も、やっぱり限界というものがある。馬鹿げたノースフェイスのステッカーを張って閉じ込めていたポリバケツの腐った生ごみが溢れだしてきた匂いがする。

その匂いで思い出すのは、あの川のこと。

僕は、確か車に乗って細い山道を走っていた。

乗っていたプロボックスには、いつも釣り竿が積んであったのを思い出す。プロボックスはあの業界ではとても重宝されていた。目立たないし、一見して誰もが土建屋だと思うから、地方で仕事をするときは大抵この車だった。

その荷台に積んでいたのは、カメラバックの中におさめられたニコンとコンデジ、幾つかの望遠レンズと単焦点レンズ。それに装着する軍用のナイトビジョンアタッチメント。さらに双眼鏡、ソニーのビデオカメラ、GPS端末。そして、ダイワのパックロッドだ。

こんな怪しげな機材に囲まれて、ロッドもきっと気まずかったはずだ。けれど、僕はいつもこのロッドを連れて仕事に行っていた。

その日向かっていたのは夕張方面。

季節は、確か夏───いや、その少し前だった気がする。

シャッターや廃屋の目立つ財政破綻した町をすぎ、炭鉱団地の薄気味の悪い廃墟を横切ったあと、道路ぞいの「メロン直売所」の看板を幾つも通り過ぎた。フロントガラスにぶつかる虫が白い点になって、日高五郎のラジオがうるさくて、そして、とエンジン音にまぎれて、窓の外からエゾ春ゼミが鳴き始めていた。山道を走っていると、そこで小さな渓流があるのを見つけた。

あれは石狩川の支流。

だったと思う。

そこで、ロッドとカメラを手にもって車を降りる。

渓流に入る砂利道のすぐ近くに車が止まっていたの見つけたからだ。

車は黒の軽バンで、ナンバーは札幌のレンタカーだ。
車内には誰にもいないし、カギも掛かっていない。しかも、キーは付いたままだ。
助手席に財布が転がっているのが見えた。ついでに封筒も。

不用心だとは思わない。

状況的に、こういうことをする奴はほかにも見たことがある。財布は礼のつもりなのだ。

そこで財布を取り免許証を確認。それを写真に撮ったあと、封筒も写真にとる。中は見ていない。

それから車のナンバーがわかる写真と、周囲の状況がわかる写真、それと車のアップの三つの絵を撮影。写真がボケてないか確認する。それが僕のやり方だった。

それから砂利道を下り、川へと降りてみる。

渓流はかなり小さかったけれど、夏だというのに水量はそれなりにあった。
水もクリアで、岩盤に周囲が覆われている。

そこで、どちらに行こうか迷った。
上か、それとも下か。
大抵、この場合は上に行くほうが良いはずだが、一応足元を確認すると、二人分の靴跡。やはり先行者がいたようだ。
足跡からしてスニーカーで、一人はキャンパスタイプ。もう一人はランニングのようだ。サイズからして、年齢が大きく離れているか、それか男女の二人組。

コメント

  1. いつも楽しく拝読してます。
    今後の展開が楽しみで仕方ありません。

    今回の冒頭部は、野外で励んでるカップルを撮ろうとしてる変態の話かと思いましたよ。それにひけを取らない凄い話でした。

    青か○を頭に置いてもう一度読み返してみましょう。
    さあ。

    • αトラウト より:

      ワイズストリームさん>いつもありがとうございます。

      今後もお話は続いていきますよ。

      そうです、そんな感じっぽいですよねw
      青〇だったほうが断然マシだったでしょうねw