北海道には雷魚がいる。
その噂を聞いたのは札幌に居たところ。
仕事の先輩で同じく釣りが好きだった人が、かつて雷魚を釣った話をしてくれました。
「αトラウト、北海道には雷魚がいるんだよ」
「マジですか?」
釣り好きだった先輩の話でしたし、石狩湾で釣りができることを教えてくれた人。このマジだって別に本気なわけじゃない。
わけがない。
マジなはなし、正直、その話は最初は信じられませんでした
僕は本州に住んでいて雷魚を見たことも釣ったこともあります。
しかし、雷魚は暖かい地域に住む外来魚のはず。
この寒い北海道で生息できるなんて信じられなかったのです。
「それじゃぁ、道南の暖かいどこかの池にいるんですか?」
「いや、道南じゃない。道北、それも池だけじゃない、本当にでかいやつは川にいるんだよ」
先輩はそう言いましたが、その時にはどうしても-40度にもなる道北の川にあの雷魚が泳いでいる姿が想像できなかったのです。
あれから数年。
僕は札幌ではなく道北に移り住み、貧乏人ながら道北の河川をホームにトラウトフィッシングを開始。狙うのはネイティブトラウト達です。
そして2年目となったこの夏。少ない月給を通帳から降ろしたあと、クーラーの効き目が怪しいボロ車に乗り込み、いつもの渓流へ。
この川で釣りを続けて2年目。
川の流れや、温度、冬に覆われた分厚い氷。
それが溶けて濁流となり、多くのサクラマスを遡上させ、周囲とは正反対の静かな夏へ。
釣ったヤマメをリリースして、再びヤマメを釣ろうと手を入れた暖かさを感じた瞬間、僕はあの先輩の言葉をもう一度思い出しました。
”本当にでかいやつは川にいるんだよ”
以前はまるで想像もできなかったその存在。
なのに、かつて本州の野池でみた雷魚が、北のトラウト達に混ざり、本流の激流の中を泳ぐその姿を想像してしまったのです。
それができたのは、釣った魚の量でも、ましてサイズでもありません。
時間。
ただ、貧しく辛い現実から逃げるようにやってきていた、この川に立っていた時間が、ようやく僕に確信させました。
先輩は嘘なんか言っていない。
いや、それどころじゃない。
僕は立ち上がり、足元の流れがあつまる本流へと目を向け、ようやく気が付きました。
あいつが、すぐそこにまで迫ってきていると。
北海道の本流雷魚に挑む
さて、今回はかなりガチな感じではじまりましたが、もうガチもガチ。
その存在すら明らかではない怪物、北海道の本流雷魚に挑んてきたαトラウトです。でもマジでガチだから!
なんて感じでおちゃらけてますけどね、本当は真剣なんですよ。
だって相手は雷魚。普通に釣ったって冗談じゃすまない相手ですからね。
しかも道北の本流雷魚ときたもんですから、そもそも本当にそんな雷魚がいるのか?っていう話ですよ。
北海道にも雷魚がいるっていうのは、道民の方なら多くの方が知る所。
ただ、その生息地は実に雷魚らしい沼や池などで、蓮などがきちんと咲くような水温の高い場所ばかりなのです。
ところがです。僕の先輩の話によれば、北海道、しかも道北には渓のド本流を泳ぎやってくる大物雷魚がいるっていうのです。
そんなものUMA認定したっておかしくないでしょ、と思っていたのですが、どうやらホントウに居るというので、人生初となる北の本流雷魚を狙いに出向いてきました。
なぜ北海道に雷魚がいるのか?
このブログをお読みの方は北海道外の人もかなりいらっしゃいますから、まずは北海道の雷魚について説明。
雷魚に多少お詳しい方なら「なんで北海道に雷魚が?」と思われますよね。
当然です。
雷魚といえば高温多湿の地域を好み、高水温でなければ活性は上がにくく、その釣りは基本夏場に集中します。
だからこそ、水温が低い北海道に雷魚が居ること自体が不思議に思えるはず。
ですが、実は雷魚自体、それほど高水温の地域ばかりに住む生き物でもないのです。
雷魚はロシアにも生息できるほど寒さに強い
高温な水を好むことで知られる雷魚は、水温が15度以上になり動きを活発化させ、20度を超えてはじめて捕食活動に転じます。
ところが、そんな雷魚はロシアやモンゴルにも生息しているのです。
なぜ生き残れるのかというと、雷魚は冬眠ができるから。
彼らは水温が極端に低下すると一気に冬眠状態になり、水の底で動かなくなることで冬を越すんです。
なので、水温が低い地域でも生き残ることはできますし、それは北海道であろうとも可能なのです。
また、北海道に住む雷魚の多くは池などに住んでいます。
そこなら水温も安定しいて冬も越しやすいですし、夏場も高温になり活動しやすい。ネスト作りも安定して行えます。
ただですよ、
いくら雷魚が寒くても生きれるといっても、道北の本流は決して雷魚にとって適した環境とは言い難い。
まず水温が低すぎる。
そして、流れがあり過ぎる。
そんな状況で生き残れるのは、ロシアにも居る雷魚の最大種、カムルチーのアムール亜種のみ。
この雷魚はイトウ(タイメン)などもいるアムール川付近に生息しており、雷魚の中でも大型化することで知られています。
北海道にいる雷魚は在来種とのうわさがある
北海道に雷魚がやってきたのは、本州から食料として持ち込まれたことがはじまりだと言われていますが、実際には外来種なのか、在来種なのかはっきりとしていません。
その原因となっているのが、先ほども登場したカムルチーのアムール亜種。
この最大サイズになる雷魚は元来シベリア地方に生息していたことから、実は北海道にも昔から生息していたのでは?という説が存在するのです。
確かに、北海道はもともとロシアとは大陸でつながっていた場所。
それならアムール亜種のカムルチーも、もともと北海道に居た可能性があるのでは?ということになっているのです。
しかし、事実は定かではありません。
これだけの巨大魚なら当然アイヌの伝説にも残っていてもいいのですが、登場するのはアメマスとイトウが大半。チョウザメすらでてくるのに、カムルチーに関するものはまだ見つかっていません。
また、道内では特定外来種として指定されているので、ばっちり駆除対象です。
しかし、沼や池にいる普通の雷魚ならいざしらず、この本流を泳ぐ雷魚に関しては、駆除しようにも普段どこで何をして生活しているのかまったくわかっていないんです。
本流を遡上するという北海道の雷魚を狙え
というわけでカムルチーについてのおさらいはここまで。
ここからはいよいよ、在来種か古来種かすら謎という、幻の北海道本流雷魚釣りがスタートです。
それにしても、道北の河川のまっただ中に、あの雷魚がいるなんて。
普通に考えて想像しにくいですし、どうやって釣りをしていいのかも良くわかりません。
なぜなら、雷魚釣りのメソッドの大半はウィードが生い茂る池を想定したものだから。
だからこそ水面を攻めるフロッグゲームが中心となり、極太のPEラインとベイトタックルで挑むようになったわけです。で、中高生時代の僕の雷魚釣りも大半はそれ。
そんな雷魚釣りですが、本流のど真ん中で釣るにはどうしたらいいのか、雷魚釣りの専門家でもさすがにわからないでしょう。
僕も必死にネットを検索しましたが、本州の本流での雷魚は大半が流れた止まったような場所ばかり。
一方、今回の雷魚釣りの場所は本流とはいっても、道北の上流部の本流。
てか、もう完全に渓流域。
普通に流速いし瀬とかありまくり。
あの流の中にフロッグを投げ入てみてもいいですが凄まじいスピードで流れるゴミにしか見えません。
それに、泳いでいるレンジも付くポイントもまるで不明。
そもそも本流を泳ぎ切る遊泳力があること自体知らなかったのに、レンジもポイントも何もわかりません。
つまり、雷魚釣りの常識が何一つ通用しない。
そこでまず考えたのは、彼らが何を食べているのかです。
普通の雷魚なら色々餌はあるでしょう。
カエル、小魚、モエビなどなど。
でも、本流の雷魚はたぶん違う。
で、そこで思いついたのが
ウチダザリガニ。
もちろんウグイなんかの魚も食べているでしょうが、彼らが最も好んで食べるだろう相手は、間違いなくこいつらです。
コメント
初めてコメントさせていただきます。いつも楽しく見させていただいています!同じ道北に住んでいるものですが、渓流に雷魚いるんですね!目からウロコでした!私の住んでいる町でも湿原にはいるのは聞いたことがありますが、川で釣るとは恐れ入ります!ちなみに、同じ道北圏とあり、タックルやルアー考察とても参考になります(^-^) 真似て購入や、カスタムしたりさせていただいてます!
>shunさん
はじめてのコメントありがとうございます!
おお、いつもお読み頂きまして本当にもうなんといっていいのかもう
かなり北のほうにも雷魚がいるみたいですよね。この辺りでも結構雷魚釣りは人気です。
いやほんとうに、本気で本流泳いでいたとは思いませんでした(笑)
タックルやルアーなどの記事もお読みいただき本当にありがとうございます!
まだまだ経験浅いですが、お役に立てる記事を書いていこうと思います。