渓流釣りは、自然の中でヤマメやイワナ、ニジマスを狙える最高に楽しい釣りです。
きれいな水、涼しい空気、鳥の声、木漏れ日。もうこれだけ聞くと、心が洗われるような気がします。実際、渓流に立っている時間はかなり気持ちいいですよね。
ただし、渓流釣りは想像以上に危険も多い釣りなのも忘れてはいけません。
足元は滑り、水は冷たく、山の天気は変わりやすい。さらに虫もいます。動物もいます。場所によっては携帯の電波も入りません。
つまり、渓流釣りは癒やしの趣味でありながら、油断すると普通に危ない趣味なんですよね。
そこで、この記事では、渓流釣りで特に気をつけたい危険と、その対策についてまとめていきます。渓流釣りは楽しいです。でも、自然はこっちの都合に合わせてくれません。そこがまた面白いところでもあり、ちょっと厄介なところでもあります。
渓流釣りはなぜ危険なのか?
渓流釣りが危険と言われる理由は、釣り場そのものが人工的にまったく整備された場所ではないからです。
管理釣り場のように足場が安定しているわけでもなく、海釣り公園のように柵があるわけでもありませんし、足場がとにかく悪い事が渓流ではあたりまえ。岩、倒木、ぬかるみ、急な斜面、深み、流れの強い場所など、自然の地形をそのまま歩くことになります。
しかも釣りをしている時は、どうしても魚やルアーに意識が向きます。
あの岩の裏に魚がいそうだな。
もう少し前に出せば届きそうだな。
対岸の流れにルアーを入れたいな。
こう考えているうちに、足元への注意が雑になり、転倒の危険性が高まる。これが渓流釣りで一番怖いところです。
一番多い危険は転倒・滑落
渓流釣りで最も身近な危険は、転倒や滑落です。
渓流の岩はとにかく滑ります。濡れた岩、コケのついた石、泥の斜面、落ち葉の積もった道など、どれも見た目以上に足を取られます。
特に怖いのは、浅い場所だから大丈夫だと思ってしまうことです。
水深が足首くらいでも、石で滑って転べば体を強く打ちます。ロッドを持ったまま転ぶと、手をつくのが遅れることもあります。背中に荷物を背負っていれば、バランスも崩れやすくなります。
渓流では、転ぶこと自体が大きな事故につながります。
岩に頭を打つ、足首をひねる、膝を強打する、どれも現場ではかなり厄介です。
対策としては、まず無理に進まないことです。
魚がいそうなポイントがあっても、足場が悪ければ諦める判断が必要です。釣れそうな場所ほど危ないことがありますよね、魚もなかなか性格が悪いです。いいポイントに限って、人間の足腰を試してきます。
また、滑りにくいウェーディングシューズを使うことも重要です。靴底の種類は釣り場の環境によって合う・合わないがありますが、普通のスニーカーや長靴で無理に渓流を歩くのはおすすめできません。
そのほかにもスタッフ(杖)を使って進むのも転倒防止に役立ちます。とくに足腰が弱ってきていると感じているヒトはスタッフを使って渓流を進むようにしましょう。
増水は本当に危険
渓流釣りで特に注意したいのが増水です。
渓流は雨の影響を受けやすく、短時間で水量が変わることがあります。自分がいる場所では雨が降っていなくても、上流にダムがある場合、放水で一気に水が増える場合があります。
川の水が増えると、普段は歩ける場所が歩けなくなります。
行きは渡れた川が、帰りには渡れなくなることもあります。これが渓流釣りの怖いところです。
特に、入渓してから川を何度も渡るような釣りでは注意が必要です。上流へ釣り上がっているうちに水量が増えると、戻るルートが危険になります。
水の色が濁ってきた、流れてくる落ち葉や枝が増えた、水位が上がってきた、流れの音が大きくなった。こうした変化があれば、早めに撤退したほうが安全です。
渓流釣りでは、釣れそうだからもう少しだけ、という判断が危険につながります。
もう少しだけ釣りをしたい・・・というこの言葉は釣り人にとってだいたいロクな結果を生みません。人類の失敗の半分くらいは「もう少しだけ」から始まっている気がします。
天気予報は必ず確認し、雨の後や雨予報の日は無理をしないことが大切です。
ウェーダーの危険性も知っておきたい
渓流釣りではウェーダーをよく使うのですが、このなかに水が入るととても危険です。
水が入ると一気に重くなり、動きにくくなります。流れのある場所では、立ち上がるだけでも大変です。
また、ウェーダーがあるからといって深い場所へ入りすぎるのも危険です。渓流では水深が浅く見えても、急に深くなっている場所があります。透明度が高い川ほど、距離感や深さを見誤ることもあります。
対策としては、腰より深い場所に入らないことを基本にしたほうが安全です。無理な渡渉は避け、流れが強い場所はとにかく避けること。
ウェーディングスタッフを使うのも有効です。杖のように使って水深や足場を確認できるので、かなり安心感が出ます。
そして何より、焦って川を渡らないのが大事。
川をわたる時は常に慎重にコースを選び、遠回りしてでも安全なルートを通るようにしましょう。
落石・倒木・急斜面にも注意
渓流釣りでは、水の中だけでなく陸上にも危険があります。
山の中の渓流では、落石、崩れた斜面、倒木、ぬかるみなどに注意が必要です。
特に崖下や急斜面の近くを歩く時は、上から石が落ちてくる可能性もあります。雨の後や雪解け時期は地盤が緩んでいることもあり、斜面が崩れやすくなっている場合があります。
また、倒木の上を歩くのも危険です。
一見しっかりしているように見えても、木が腐っていたり、表面が濡れて滑りやすくなっていたりします。倒木の下に足を取られると、転倒だけでなくケガにつながります。
渓流では近道をしようとすると、だいたい危険度が上がります。
あそこを抜ければ早いな、と思った場所ほど、足元が悪かったり、枝に引っかかったり、最終的に全然早くなかったりします。自然界のショートカットは、だいたい罠です。
安全なルートがあるなら、多少遠回りでもそちらを選ぶのが正解です。
熊・スズメバチ・マダニなど生き物の危険
渓流釣りでは、野生動物や虫にも注意が必要です。
地域によっては熊の危険があります。特に北海道や東北、山深い地域では、熊対策はかなり重要です。
熊鈴をつける、単独釣行を避ける、見通しの悪い場所では声を出す、食べ物の匂いを不用意に出さないなど、基本的な対策をしておきたいところです。
また、スズメバチにも注意が必要です。
夏から秋にかけては活動が活発になり、巣に近づくと攻撃されることがあります。羽音が大きく聞こえたり、同じ場所をハチが何度も飛んでいたりする場合は、近くに巣があるかもしれません。
そしてマダニも厄介です。
藪こぎをするような場所では、服に付着することがあります。肌の露出を減らし、帰宅後は体や衣類を確認したほうが安全です。
渓流釣りは魚を釣りに行っているのに、現場では魚以外の生き物の存在感が強いことがあります。
とくにスズメバチと目が合う釣りは危険ですね、魚より先にスズメバチと出会ってしまうあのスリルはあまり味わいたくありません。
携帯の電波が入らない危険
渓流釣りでは、携帯電話の電波が入らない場所もあります。
これはかなり大きな問題です。
ケガをした時、道に迷った時、車に戻れなくなった時、電波がなければ助けを呼ぶのが難しくなります。
特に一人で渓流に入る場合は、事前に家族や知人へ行き先と帰宅予定時間を伝えておくことが大切です。
しかし近年になり衛星を使った通信がスマートフォンでも可能になってきたので、電波は入らなくても衛星通信で連絡をとれるようにもなってきました。
そうしたサービスは積極的に使うのがおすすめです。
単独釣行は特に慎重に
渓流釣りは一人で楽しむ人も多い釣りです。
一人で自然の中に入る時間は、とても魅力があります。静かで、自分のペースで釣りができて、余計な会話もありません。人間関係のストレスから解放される感じがあります。
ただし、単独釣行はリスクも高くなります。
ケガをした時に助けてくれる人がいない。転倒して動けなくなった時に発見が遅れる。道に迷った時に判断が偏る。こうした危険があります。
一人で行く場合は、無理な場所に入らないことが大前提です。
初めての場所、山深い場所、増水の可能性がある日、天気が不安定な日は特に慎重に判断したほうがいいです。
また、必ず行き先と帰宅予定時間を誰かに伝えておきましょう。
大げさに感じるかもしれませんが、渓流では大げさなくらいがちょうどいいです。安全対策は、使わなかった時に一番価値があります。
初心者がやりがちな危ない行動
渓流釣り初心者がやりがちな危ない行動もあります。
まず、魚を追いかけて無理に前へ出ることです。
あと少しで届きそう、もう一歩前に出れば投げられそう。そう思った時が危険です。渓流では、その一歩が滑ることがあります。
次に、天気を甘く見ることです。
少しの雨なら大丈夫と思っても、渓流では水量が変わることがあります。特に山の雨は読みづらいので、無理は禁物です。
そして、装備を軽く考えることです。
ちょっと釣るだけだから、近場だから、浅そうだから。こうした理由で装備を省くと、いざという時に困ります。
渓流釣りでは、釣れるかどうかよりも無事に帰れるかどうかが大事です。
ボウズで帰るのは悔しいですが、無事なら次があります。ケガをして帰ると、次の釣りどころか日常生活までしんどくなります。
ボウズはネタになります。骨折はネタにするにはコストが高すぎるし、熊に食われた話はあまり笑ってくれないですよ。
渓流釣りで持っておきたい安全装備
渓流釣りでは、安全装備をしっかり準備しておきたいところです。
最低限、滑りにくいウェーディングシューズ、レインウェア、予備の防寒着、飲み物、ホイッスル、モバイルバッテリーなどは用意しておくと安心です。
特にホイッスル系は小さくても役に立ちます。声を出し続けるより体力を使わず、遠くまで音を届けやすいですし、最近は電子式のものもあります。
また、出来る限り熊避けスプレーは持っておきましょう。安全装備は使わずに帰ってこられたら勝ちです。釣れなかった日でも、安全装備を使わなかったなら、ある意味かなり釣果があります。無事という魚はでかいです。
渓流釣りは危険を知ればもっと楽しくなる
ここまで渓流釣りの危険について書いてきました。
転倒、増水、ウェーダー、落石、虫、熊、低体温症、電波圏外、こうして並べると、渓流釣りがかなり危ない趣味に見えるかもしれません。
実際、危険はあります。
ただし、危険を知って準備をすれば、渓流釣りはとても楽しい釣りです。
自然の中で魚を探し、流れを読み、ルアーを通し、魚が追ってくる瞬間を見る。これは渓流釣りならではの面白さです。
大切なのは、自然を甘く見ないことです。
無理をしない。天気を確認する。足元を見る。装備を整える。早めに引き返す。
このあたりを意識するだけでも、危険はかなり減らせます。
渓流釣りは、魚を釣る遊びである前に、自然の中から無事に帰ってくる遊びです。
無事に帰って、風呂に入って、今日は危なかったなと笑えるくらいがちょうどいいです。
釣果より命。これは冗談抜きで大事です。
でも、できれば魚も釣りたいです。そこは人間の欲なので仕方ありません。
安全第一で、渓流釣りを楽しんでいきましょう。

