あんまり効果なさそうなボトムを狙う渓流フロントフックスプーンを試してみた

フィッシングアイテム
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かつて管理釣り場を席巻し、あまりに釣れすぎたために大会で使用禁止。その後、管理釣り場でも次々と使用が禁止されていったスプーンのフックセッティングがあります。

それが、フロントフック。

そのセッティングにより流行したのが「縦釣り」や「ズル引き」そして「放置」というスタイルです。

しかしブームの火付け役となったスプーンのフロントフックは禁止エリアの増加により途絶し、次なるボトム攻略のためスプーン以外の縦釣り対応ルアーが登場し脚光を浴び、今ではボトム専用のエリアトラウトルアーが一つのジャンルとして確立されています。

しかし、渓流の「縦釣り」や「放置」は深場限定であり、ズル引きなんて恐ろしくて出来ない。管理釣り場とは違って、根掛かりのリスクが圧倒的に高いし、岩が多い渓流という環境にマッチしていない。渓流のボトム攻略で有名なボトムノックスイマーですら、根掛かりという点は攻略していない。どんなルアーでもボトムを狙えばいつの間にか岩の隙間にはさまってしまうんです。ええ、フックが引っかかるとかではなく、ルアーごと岩の間に入ってしまうんですよ、あそこは。

それが渓流のボトム。そこはまさにルアーにとっての地獄。何を使おうが岩の間に吸い込まれるようにして根がかるという厳しい環境なのです。

それでもなお、ボトムは本当に攻められないのか?

近くの川にはニジマスが多く、寒い時期には速いルアーに反応が悪くなるため、ボトムを攻めた方が釣れることも。だからこそ、ボトム狙いの釣りを一度試してみたい。

そう思い、一度「縦釣り」や「放置」のスタイルでルアーフィッシングをしてみたくなりました。エリアと違い、ネイティブな渓流では縦釣りが禁止されていないのも魅力です。

しかし、エリア用のスプーンは渓流では扱いにくく、フロントフックのままでは流れの中でうまくフックが立ってくれません。

そこで、自分で渓流向けの縦釣りスプーンを作ってみることにしました。

そして、もしそれでヤマメも釣れたらいいなと思っています。

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縦釣りとはどんな釣り?

スプーンを使った釣りというと、多くの人が思い浮かべるのはリールを巻いてスプーンを泳がせるというもの。

しかし「縦釣り」はその逆であり、リールで巻かず、ロッドで操作。

そしてルアーを持ち上げて、水底に落とし、放置するという縦の動きをメインにした釣り方です。

この釣りが管理釣り場で禁止するまで流行したのは、管理釣り場のトラウトが養殖場で育てられており、水面からばらまかれ、水底へと沈んでいくペレットを食べているせい。

とはいえ、魚の興味はもっと広いもの。ペレットに似ていなくても、動くものや、上からフワッと落ちてくるもの、底にジッとしているものにも反応します。

実際、渓流でも「リフト&フォール(持ち上げて沈める)」の動きを無意識にやっている人は多いはず。ルアーを底に落とし、ちょっと持ち上げた瞬間にガツンと食ってくる…そんな経験はないでしょうか?

さらに言えば、ルアーをしばらく放置しておいたら魚が勝手に食いついた、なんてこともたまにあります。僕自身も、バックラッシュの修正中にヒットしたことが何度かありました。

使っていたのはスプーンやボトムノックスイマー、ヘビーシンキングミノーなど。特に何もせず、ただ底に放置していただけで釣れたこともあるんです。

渓流用の縦釣りスプーンを作った

そこで、渓流専用の縦釣りスプーンを自作してみました。

使用したのは、塗装が剥げた古いスプーン2種類:

  • シマノのロールスイマー3.5g(管理釣り場用)
  • MIUの肉厚4gスプーン

これらをピンクに再塗装し、スプーンのお尻側にフロントフックを装着。
さらに、ネオジム磁石を接着して、マグネットの力でフックが垂直に立つように改造しました。

このセッティングなら、複雑な水流やデコボコしたボトムに落ちてもフックが上を向いたままになりやすいはずです。たとえ斜めに落下しても、フックは上を向き続ける。

また、幅広のスプーンを使うことで岩の隙間に挟まるのを防止。

そして、浮き上がりやすいのも利点。渓流のボトムでは根掛かりの原因はルアーが浮き上がりにくいほど起きます。

とはいえ普通、渓流のルアーは浮き上がりにくいほうが良しとされますよね。

でも、浮き上がりにくいということは、それだけまっすぐ岩や石の隙間に突っ込む確率をあげます。

ルアーのスナッグレス効果というのは、基本的にフックが何かに引っかかる確率を下げるためにほどこされています。しかし、海藻や倒木や沈みモノのようなストラクチャーを回避するのとは違って、岩だらけの渓流の根掛かりは、ルアーそのものが隙間に挟まることでおきる。だから通常のスナッグレス効果はあまり意味がありません。スピナーベイトだろうがラバージグだろうが岩の隙間に入れば終わりです。

だから、そこをクリアするためには、ただ上方向に逃げるしかありません。

渓流のようないわばを、しかも釣り上がりでクリアするとしたら、流れの中をとにかく垂直に近い角度で浮上し、眼の前の岩を飛び越えるしかない。つねにピョンピョンとやるしかない。

ということは、渓流のボトムで根掛かりしないために必要な性能とは、沈みやすく、さらに浮き上がりやすいこと。釣り上がりでは特にこれが大事かもしれません。

まず、釣り上がりでは常にルアーが後ろから水で押されている状態なので、ルアーの浮上能力はどの釣り場よりも消されてしまう場所です。

さらに釣り上がりでは傾斜の問題があります。ルアーを投げる先の上流とは、アングラーのいる位置より標高が必ず高い場所となるため、引っ張る時のラインの角度がとても浅くなる。おまけに使うロッドが短いため、さらにラインの角度が水平に近づいてしまう。

つまり、普通に巻いたりリフトする程度では浮き上がる角度が遅くて、岩の隙間に突っ込みやすい。

だから、そもそもルアー自体にできるだけ真上に浮上できる能力が必要です。本来渓流用のルアーは「浮き上がらない」ことが大事なんですが、小さな渓流ではコレがデメリットになり根掛かりを引き起こす。なにせ小渓流は狭すぎるため、クロスやダウンクロスという釣り方はほぼやらず、まっすに、上流に向かってルアーを投げ続けていきます。つまり、浮き上がらない=とにかくスタッグの連続となります。

これでルアーを無くさなず回収しやすいのが、水深の浅い小渓流の良さですが、問題はルアーを回収するためにポイントを潰してしまう事ですし、ルアーの破損率もかなり高い。釣果が高いスピナーは小渓流でも多用するのですが、浮き上がりにくい上、簡単にスタッグする形状なので、ポイントを潰しやすい。そして、あっという間に根掛かりでボディやフックがボロボロ。

さらにシンキング系ミノーのリップを何度もへし折ってしまう悲しい事故も多発するんですが・・・・ああ、思い出すのも辛い。なにせリップの折れたミノーほど悲しいルアーはこの世にないんですよ。まるで翼の折れたエンジェル、ふたりの想い、かき消す雨のハイウェイ。

なので、やはりスプーン。

リップ付きよりもスプーンのほうが沈下速度も早ければ浮上力も高い。そして障害物を乗り越える能力も高い。それからボトムとの接触が多くても破損率が低い。塗装は速攻で剥げますけどね。

でも、釣り上がり中心の渓流でボトムを狙うなら、コレが最も根掛かりを回避できるし、ポイントを潰さずにすむ。

なので出来るだけワイドなスプーンを使い、できればアイの位置を逆にして使います。

こうするとフックが立ちやすいという利点の他、本来は浮き上がりにくい形状となっている渓流用スプーンを後ろ側から引っ張ると、反対に浮き上がりやすくなるんですよ。とはいえ、それもわずかな程度。

なにせキャスタビリティも考えると渓流では浮きやすい薄くて軽いスプーンはまず使えない。実用範囲として、およそ3~4gの肉厚なスプーンを使うことになるので、たとえスプーンを反対向きに使おうが、浮き上がる能力もワズカに上がるって感じです。

実際に試した結果

このスプーンで実際にニジマスは釣れました。

しかし、水深がわりと浅い場所でしたので、結果としては手応えは薄い。

キャストして、そこからボトムをピョンピョンしていたら釣れましたが、これくらいならべつにフロントフックじゃなくても釣れたかもと思っちゃいます。もっと深い場所で釣れたりとか、さらに放置で釣れてたら面白かったんですけどね。

そして、このセッティングは水面下はともかく、水の上に張り出した木を乗り越える時には弱い。空中でスプーンが回転して逆さまになってしまうと、そのままフックに引っかかてしまう。このあたりの能力にかんしては、スプーンはノーマルのフックセッティングが一番良いとわかりました。ええ、やはりスプーンはノーマルこそ偉大なのです。

ただ、やはり岩の間には今のところ一回も挟まらなかったですね。かなりネチネチとやってましたが、一度も岩の間に吸いこまれない。

これはルアー操作の方法も大きく関係していて、とにかくロッドを高くして、素早くルアーを上方向に浮き上がりやすく動かしたのが回避能力を高めていたのでは?と思うところ。つまりボトム用スプーンでなくとも、とにかく上に引っ張るよう努力すれば良い。

ただ、ミノー系やバイブレーション系はソレをやってもあまり効果は得られないと感じたところ。短いロッドだとまったく浮かないので、やっぱりボトムを攻めるならスプーンが一番良いです。

なので、渓流のボトムを攻める時にロッドを寝かすのは危険ですね。とにかく上に持ち上げる。短いロッドも不利。できれば長いほうがいい。

それが無理なら、できるだけ高い場所を選んで立ち、そこからルアーを投げたほうが良さそうです。

渓流のボトムを攻めやすいルアーはもっと作れるはず

渓流の深場、特にボトムを攻略するためのルアーは、まだまだ開発の余地があります。

課題はフックの立ち方と岩の回避性能。もっと安価で、かつ岩を回避しやすく、垂直に浮き上がるタイプのルアーが理想です。素早く落ちて、素早やく浮き上がる。それが岩をクリアする理想的な動き。

さらに、リップ付きのルアーも障害物回避性能が高いため、ボトム攻略に向いたリップ付きのモデルがあると理想的ですが、ボトムからあまりにも離れないルアーは岩の隙間に挟まりやすいし、ラインと岩が擦れやすいのも気になるところ。つまりラインブレイクに繋がる危険性ですね。

とまぁ色々ありますが、こういうボトム系ルアーは速い動きのルアーに反応がないときや、追うけどすぐ諦めるような水温が低い時の釣り上がりに有利かも。スローに攻めたり、放置したりして低活性の魚に口を使わせる釣り方ができれば、渓流ルアーフィッシングの幅も広がると感じています。