魚は音を聴いている?ルアーに響く金属音と水中音の世界

渓流ルアーHOWTO
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釣り人の中には「ルアーの音なんて気にしたことない」という方は少ないでしょう。音は釣りにとって重要な要素であり、音を消すことや出すことは釣果に影響するという話は幼いころから聞いていました。

また、スレた魚にはサイレントがいいとか、音にスレるなんて話も多いので、できるだけ音を消すためにスプリットリングをサイレント仕様にしたこともありました。

しかし、実際に魚はどのていどの聴力をもっているのか?とくにトラウト系は?

と思って調べたところ、どうも魚は私たちが思っている以上に音に敏感なのですが、あるいみ鈍感な部分も多くて驚きます。なので、今回は魚の聴力について、そしてルアーが発する金属音や水中音の特徴について、科学的な視点から掘り下げてみたいと思います。

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魚の耳はどこにあるのか?

魚にも耳があります。ただし、私たちのような外に突き出た「外耳」はありません。魚の聴覚器官は体の内部にあり、「内耳」と「側線」と呼ばれる2つの仕組みで水中の音や振動を感じ取っています。

  • 内耳(インナーイヤー):音波の圧力を直接感じ取る器官。魚の体内にあり、重い耳石(オトリス)を使って音の振動を感じています。
  • 側線(ラインセンス):魚の体の横に並ぶ小さな孔。水流や微細な振動を検知するセンサーのようなもので、主に低周波の動きを感知します。

この2つを使い分けながら、魚は水中の音を「聴き」、時には獲物の動きを感知しています。

魚が聴こえる音の周波数と音量

魚の聴力は種類によって異なります。一般的には100Hz〜3kHzあたりの周波数帯を得意としており、平均して2kHzまでは聞こえているとも言われています。ただ、1000kHz以上になると急激に感度が落ちる魚が多く、トラウトもその部類に入ります。

反応しやすいのは200Hzから300Hzの周波数帯で、​この範囲では聴覚感度が良好。

​最も感度が高かった300Hzでの聴覚閾値は86.8±9.4dB re 1μPaと報告されています。つまり、水中で魚が動いたりするような音が特別良く聞こえるよう設計された体を持っています。逆に高音域への反応は悪いですし、多くの魚がそのような体なようです。

そしてトラウト類は特別耳が良い魚ではありません。1000kHz以上となると、ささいな音には反応すらしないという話もあります。

そしてトラウトは川に住んでいる事が多く、それらの騒音になれている魚でもあります。

水中というのは空気中よりもはるかに煩く、渓流のような場所はつねに騒音レベルで水の音が鳴り響いており、その環境に慣れた魚は音に対するリアクションが薄いです。

なので、本来魚が感知し警戒して逃げるはずの人の歩く振動にすら反応しないことも良くあります。

経験的に渓流では魚の後方・・・つまり、下流から上流へと向かって歩いていれば、時々素手でつかめるような距離までヤマメやイワナ、ニジマスに接近できることがあります。水の中は空気中の約4.4倍ほど音が伝わると言われており、魚も振動に敏感とは言いますが、水の中がうるさい渓流では人が歩く音すら魚に聞こえていないようです。

逆に水の中が静かな環境に住んでいる魚は、わずかな音にも敏感に反応するかもしれません。例えば波の音や水流も少ない小さな野池やダムのような場所にすむ魚は音にかなり敏感。

そして音の違いを感じやすい静かな水の中だからこそ、視力より音の違いを聞き分けて生き残っている魚もいるはず。着水音やポッパーのような捕食音などに反応する魚や、ブレードの出す金属音、ガタガタゴトゴトというラトルなどに集魚効果が期待できます。

実釣との関連

渓流など常に水音が鳴り響いている環境では、魚にとっても背景ノイズが多く、音の識別が難しい状況です。流れの音は連続的な低周波ノイズであり、これはトラウトの聴覚帯域(100Hz〜800Hz)と重なるため、自然音の中にルアーの発する音が埋もれてしまうこともあります。

また、音が常に多い渓流では“沈黙”よりも“適度な音”があるルアーの方がバイトのきっかけになる可能性があります。

とくに金属音として有名なインラインスピナーやブレード付きルアーの連続した音や振動はトラウトの聴覚帯域と一致する部分があるといわれており、トラウトのバイトを誘発するとも言われています。

水中での音の伝わり方

水中は空気よりも音の伝導効率が高く、音は約4.4倍の速さ(約1500m/s)で伝わります。そのため、水中では音がより遠くまで、明確に伝わる特性がありますが、高音は減衰しやすく、音が届きにくくなります。

そのため、水中では中音域が最も伝わりやすく、魚に聴こえやすい帯域とも重なります。

ルアーが発する金属音は?

ここで気になるのが、私たちが普段使っているルアーが発する音。特に金属部品——たとえばスピナーベイトのブレード、スプリットリング、ワイヤー、フックなどが衝突して生まれる「チリッ」「カチッ」といった音です。これらの音は想像以上に水中で響いていますが、その周波数は中音域まで減衰していること。そして、魚が感じとっているのは、チリやカチではなく、もっと小さく、重い音になっている可能性が高いです。

そして、魚がその音を聞き取っているのか?と考えると、もしかしたら聞こえていない可能性も十分ありえます。

このようにステンレス製がおおいアイやスプリットリング、ブレード同士が重なるような金属音は水中での周波数の減衰率が高いです。そして軽い金属同士が瞬間的にぶつかる音は高音域にあり、トラウト系は検知しにくい部類に入ります。

つまり、スプリットリングやアイ、ブレードやスプーンなどの金属の衝突音はトラウトはそこまで気にしないかもしれません。恐らくかなりの確率で無視するでしょうし、騒音まみれの渓流となれば確率はさらに上がります。

ただ、静かな水中となると話は別ですし、アイとスプリットリングが接触するわずかな中~低音部分。特に300Hz辺りはトラウト類に聞こえているため、接近した時にわずかに感知するはず。

こうした音もこだわれば無視できない存在といえますし、減衰した部分の音が警戒心を与えたり、反対に集魚効果を発揮している可能性も存在します。

音が釣果に与える影響

金属音やラトル音、ブレードのバイブレーションなど、ルアーが発する「音」はアピール力になります。特に、

  • 濁りが強い時
  • ナイトゲーム
  • 水温が低くて魚の動きが鈍いとき

などでは、視覚よりも聴覚への刺激が効果を発揮する場合があります。

一方で、クリアウォーターやプレッシャーの高い状況では、逆に「音がうるさい」と感じられてしまうこともあります、

  • サイレント系ルアー
  • 柔らかい音の素材(ウッド)
  • 音を意図的に抑えるチューニング

なども活用していきたいところです。


ただ、それは水のクリアさやスレだけでではなく、そもそも魚たちが静かな環境にいるせいで、突然鳴り響いた異質な音にビックリしているかもしれません。

魚は住む場所の音になれると、いくら大きな音でも驚かなくなります。もし魚の周囲がすでに騒音にまみれていたとしたら、サイレント系のルアーよりもラトル系で目立たせたほうが効果があるかもしれませんね。

そして魚は低い音ほどよく聞こえており、その多くは水をかき混ぜた時の音と考えられます。

なので金属の擦れるような音よりも、ルアーのリップが水を撹拌する音や、ラインが水を切る時の音を良く捉えているとも言えますし、その周波数帯に存在する特定の音が魚の生存本能に大きく関わっている・・・つまり、低い音ほど魚を警戒させたり、好奇心や捕食本能を刺激すると考えられます。

そしてスピナーやブレード系ルアーが回転する「ブーン」という回転音の周波数は丁度その領域にありますし、ルアーの着水音や、水中で木やプラスチック製のルアーが硬いモノにぶつかる、「ゴツン」や「カツン」という音も似たような帯域にあります。

こうした中低音(100以上1000Hz未満)がトラウトを警戒させたり、攻撃スイッチを入れる可能性があります。なので魚の捕食スイッチを入れる場合、水中でルアーを何かにぶつけたり、なにかを回転させるのは効果的でもあれば、スレた環境だと逆効果に働きやすくなるでしょう。

まとめ

魚は「音」をしっかり聴いています。しかもその聴力は、私たちが思っているよりも繊細で、特定の周波数帯には特に敏感であり、環境や魚種によって反応が変わってきます。その音が魚を寄せるのか、驚かせてしまうのか。音もまた、釣りの戦略のひとつとして考えても良いかもしれませんね。

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