絶対に釣れるルアーなど存在しない。ならば絶対に釣れないルアーもこの世には無いはず。
そう信じてやまない私としては、この世のルアーの多くは必ず魚を釣れると思っています。なぜなら、ルアーというのは色や形にかかわらず、サイズさえ魚に合っていれば必ず釣れる。経験上、魚はフックさえ付いていれば何でも釣れる。ただの鉄板にフックを付けても、鉛の重りにフックを付けたオモックでも釣れるし、木片にフックを付けただけでも釣れる。運が良ければ放置するだけでも釣れるでしょう。
だからこそ、市販されているルアーで「釣れない」なんてことはあり得ないと思っていました。メーカーが釣具店に並べるような大量生産品が、まさか魚を釣れないはずがない。
しかし、その常識を打ち破る存在がありました。サイズも適正で、フックもきちんと付いているのに「絶対に釣れない」とアングラーたちを苦しめ、後に「史上最悪のルアー」として伝説になったアイテム──それがHover Lure(ホバールアー)です。
このルアーを知れば、きっとルアーの常識が覆るでしょう。釣れないルアーなど存在しないはず。しかし、ホバールアーは釣れない。それも「絶対に」。
だからこそ「これで一匹でも釣れたら奇跡」と言われ、多くのアングラーが挑戦しては敗れ去り、釣りの地獄を味わってきました。まさにB級ルアーの王道を歩んだ存在。それがホバールアーなのです。
絶対に釣れないと言われた伝説のHOVER LUREシリーズ
B級映画が好きな僕は、ルアーでもB級を愛します。そして映画ほどの知名度はなくとも、ルアーの世界にもB級カルト作品が存在します。その中でもホバールアーは「B級」「カルト」の名にふさわしい存在で、数々の伝説を残しました。
まず伝説のはじまりは、このルアーがアメリカでテレビCMで派手な演出で「爆釣」する様子が流されたことです。そして、多くの人々が通販や釣具店で購入。しかし、結果は散々。あまりに釣れず、多くのアングラーが激怒しました。
しかし、普通のアングラーはこれを買いません。誰がみてもわかる釣れない構造。ルアーフィッシングをやっている人間なら、見ただけで釣れないのがわかるのです。
ただ、CMが打たれた商品の被害者は釣り知識の少ないファミリー層。彼らはCMを信じて「釣れる!」と思って購入したのです。その結果、騙されたと憤慨し、ルアーを池や沼に投げ捨てて帰る人まで出ました。
しかも原因は釣り場や腕前ではなく、完全にルアー設計の問題。普通なら「釣れない」ルアーは使い方や状況が悪いだけですが、ホバールアーはそうではありません。誰が使っても釣れない。だからこそ「釣れないルアー」の代名詞となり、「史上最悪のルアー」とまで呼ばれるようになったのです。
一方で、その「絶対に釣れない」という逆説的な魅力に惹かれたアングラーもいました。彼らはホバールアーで一匹を釣ろうと挑戦しましたが、成功例はいまだ確認されていません。日本でも釣りコラム「B級ルアー列伝」で紹介され、ごく一部に強烈なインパクトを残しました。
ホバールアーの概要
ホバールアーのコンセプトは「葉っぱにとまったトンボをバスが捕食するシーンの再現」。
しかし、葉っぱ部分までルアー化し、組み立て式にするなど余計な要素を詰め込んだ結果、玩具のような複雑さに変貌。見た目は面白いが、釣果は皆無。まさに「魚を釣ることを忘れたルアー」です。
主な部品
- メインブイ(Buoy): スイレンの葉を模した浮体部分。空洞で浮力を持ち、水面に浮かぶ。
- プラスチック製のトンボ胴体: 捕食対象を模倣。
- カスタムオプション: 目のステッカーや羽のカラーバリエーション。
- フックとウェイト: 複数のフックと小型ウェイト、ゴムチューブ。
組み立て方法
- 胴体に目のステッカーを貼り、羽をはめ込む。
- フックを腹部に差し込む。
- 胴体をブイのステムにクリップで取り付ける。
- ラインをブイのガイドに通して結ぶ。
- ウェイトをチューブに入れてブイ底部に取り付ける。
完成形は、奇妙なブイに小さなステムが突き出し、そこにプラスチック製トンボがぶら下がる姿となります。
魚を釣る気ゼロの構造
ホバールアーは子どもが水辺で遊ぶには面白い見た目ですが、肝心の「魚を釣る」機能を完全に無視しています。葉っぱ部分に魚がアタックしても無駄。トンボは口に収まらず、フックも掛からない。羽は壊れやすく、組み立ても脆弱。どうあがいても釣れないのです。
そこで一部のアングラーは「改造」して釣れるように工夫しました。
- 葉っぱにフックを付ける: これが最も有効。多くの成功例あり。
- トンボ単体で使う: これも釣れるが、強度不足で補強必須。
つまり、葉っぱ+トンボの組み合わせが失敗要因であり、どちらか単体なら釣れるルアーに化けるのです。
ただし「正規の状態」で釣れなければ意味がない、と考える人も多いでしょう。そういう意味で、このルアーはむしろ「釣れない」こと自体に価値がある。中古市場でコレクションするには十分な伝説的アイテムなのです。
自作ルアーを作る者としては、いつかホバールアーを超える「絶対に釣れないルアー」を作ってみたい。そう夢見ながら、今日もホバールアーを眺めています。

