釣り道具といえば、数百円から数千円のルアーが一般的です。高級なものでも数万円程度。しかし、世界にはその常識を超えた「馬鹿げてるほど高価なルアー」が存在します。
その名は ミリオン・ダラー・ルアー(The Million Dollar Lure)。
価格はなんと100万ドル、日本円にして1億円以上という驚異のルアーです。
ミリオン・ダラー・ルアーの誕生
2006年、アメリカで開催された世界最大級の釣具展示会 ICAST で発表されたのが「ミリオン・ダラー・ルアー」です。開発したのは Mac McBurney(マック・マクバーニー) 率いる MacDaddy Lure Company。その価格は100万ドル。釣り具としては前代未聞の金額で、発表当時から「世界一高価なルアー」として大きな注目を集めました。
しかし、このMacDaddy Lure Companyはかねてより、やたら豪華な装飾品付きルアーをつくってきており、元々のジュエリー業界でつちかった技術と資金を使い、ルアーにダイヤをつけるという恐ろしい代物をつくっていました。
とくにダイヤモンドをあしらった純金のスプーン(超高額)という、とにかく意味がわからないほど高価な代物をつくってきた経緯があります。
というのも、元々アクセサリを作る技術やら材料でルアーを作ってるわけなんで、このメーカーがつくるルアーは基本特注で、おまけに値段がめちゃくちゃ高い。
それがついに、100万ドルのルアーを作ったわけで、釣り専門誌だけでなく、スポーツメディアや一般紙でも取り上げられ、多くの人が「本当に釣りに使うのか?」と驚きの目を向けました。
さらに当時は日本製のルアー、とくにメガバスのルアーがアメリカに進出し各地を席巻していた頃なので、プライドを失いつつあった釣りメディアでは「メガバスは引け!」という文句と友に、この強いアメリカを象徴するような100万ドルのルアーを掲載しているところもありました。
100万ドルルアーのあまりに無駄な驚きのスペック

ミリオン・ダラー・ルアーの特徴は、その豪華すぎる仕様にあります。
- 全長:約30センチ
- 重量:1.3kg以上
- 素材:14金、18金、プラチナ
- 装飾:ダイヤモンドとルビーを合わせて4,753個、合計100カラット以上
- フック:ステンレス製ダブルフック
- パーツ:チタン製スプリットリング
見た目はまるで高級ジュエリーのようですが、メーカーは「実際に釣れるルアー」として設計しました。大物を狙うトローリングにも対応できる構造で、単なる飾り物ではないと強調されています。
そして最初の展示会で出品された時、すでにこのルアーは売却済み。つまり、貸出で展示会に出ていたのです。
現在このルアーの持ち主は誰になったのかわかりませんが、時折釣具点で入荷のお知らせが現れては商品が売れている様子を発見するので、やはり時々売れるみたいですね。すごい。
残された逸話
このルアーにはいくつかのエピソードが残っています。発表後、実際に海に投入されたこともあり、その際にはブルーマーリンが近くを泳いでいたという話があります。ただし、残念ながら釣果にはつながりませんでした。
さらに、このルアーは実際にトーナメントでも使用されました。2006年に開催された Bisbee’s 26th Annual Black and Blue Tournament において、実際にトローリングで投入されたのです。世界有数の賞金額を誇るこの大会に登場したことで、ルアーの知名度はさらに高まりました。結果として大物を仕留めることはできませんでしたが、「世界一高価なルアーが実戦に投入された」という事実自体が大きな話題を呼びました。
さらに恐ろしいことに、なんとこのトーナメントの最中、ルアーについていたダイヤ2個がロストしていたというのです。
つまり、使って無傷で帰ってくるなんて事は無く、普通に塗装がハゲるかの如く、表面のダイヤが剥げて消えてしまうとか・・・
恐ろしい・・・ルアーとしては、ただ装飾がちょっと取れた程度なんですが、それだけで札束が失われる。とてもじゃないですが、コワすぎて使えません。
さらに、この大会でルアーを使用していた期間中には、ルアーの保険料として1日あたり3万ドル以上が費やされたとも伝えられています。皮肉なことに、当時のトーナメント優勝賞金は6万ドル程度であり、「保険料だけで優勝賞金を超えそうになる」という事実は、多くの釣り人や関係者の間で語り草となりました。
また、展示や貸し出しの際には高額の保険がかけられていたことも知られています。万が一、根掛かりや紛失でもすれば一瞬で「海底の美術品」と化してしまうため、そのリスクは計り知れません。
オバカ釣り道具の極地
釣り人の目線では、このルアーは「絶対に投げられない道具」であり、使うだけでバカげた保険料が必要になるもの。まるで世界一の超高級車で荒れたオフロードを突っ走るような狂気の沙汰です。
しかし、確認できるかぎり、今でもこのルアーは製造され、売られているとのことで、どこかの富豪が買っているらしいです。
そして、購入したアングラーが、このルアーを実際に使用できるほどの度胸と金があるかはさておき、その頭の悪さだけは間違いない。なかなか面白いし、釣りはゴルフなどとは違って、あらゆる貧乏人から金持ちまで、アジアの辺境の田舎者からアラブの石油王まで、世界中のあらゆる人種に愛される趣味なので、中にはこんな突拍子もないバカげた超高級ルアーが現れたりするのです。
ルアー作りの参考になるのか?
というわけで、この「不思議なルアー図鑑」は世界中に眠るトンチキなルアーをみなさんにご紹介するのを目的としていますが、もう一方で自分の作るルアーに何か活かせないか?という気持ちもあります。
しかし、これはまったく活かせないどころか、そもそも作ることすら不可能ですからね。
けど、これをみて「釣果」を絶対視するようなルアーとは正反対にいる、金持ちのバカ騒ぎみたいな頭の悪いルアーも、わりと面白いんだなと思いました。
ルアーは実用性もあるし、アート性もあるし、ジョークでもあるし、その素材として貴金属がアウトというわけではないし、そのバカバカしい値段を面白がる人たちも世の中には居るというのは面白いです。

