釣りをしていると、魚ではなく奇妙なものを釣ってしまうことがあります。ルアーに引っかかったのが木の枝やビニール袋だったり、流木やゴミが大暴れしてまるで大物がヒットしたかのように竿がしなることも珍しくありません。私はしょっちゅうそんな目に遭っていて、「今日も魚よりゴミの方が元気だったな」と肩を落とすのが定番です。
しかし世界は広いもので、私が道北の川でビニール袋に振り回されているとき、アメリカの海ではもっととんでもない“外道”が釣り上げられていました。なんと魚ではなくコカイン30〜50キロ。その価値は1億円相当ともいわれ、釣り人たちは予想もしなかった「世界一の外道」を釣り上げてしまったのです。
チャールストン沖で起きた“白い大爆釣”
この出来事が起きたのは2019年6月、アメリカ・サウスカロライナ州チャールストン沖のことです。レジャー目的で海に出ていた釣り人が、黒いビニールでぐるぐる巻きにされた大きな塊を見けました。
その漂流物は何日かその海域に浮き続けていたらしく、彼らの間ではよく知られた存在でした。
「あそこはやたらシイラが釣れる」
そう、こうした漂流物にはよく魚がついています。彼らはまず、漂流物周辺に回遊魚がいないかルアーを投げて確認してみることに。
すると、次々とシイラがヒットしてきます。
シイラは漂流物周辺でよく釣れると言われるので、彼らは狙い通りの魚を釣れていました。
しかし、その数があまりに多かったと釣り人はいいます。
「その漂流物は不思議なことに、通るたびにシイラが釣れた。小さなブイ位の黒いビニール袋だ。そんなものの近くに沢山のシイラが集まっていて、見る度に何度も狂ったようにシイラがジャンプし続けていたんだ」
最初は漂流ゴミだと思ったそうですが、引き上げてみるとずっしりと重い。中を確認すると白い粉末がぎっしりと詰まっていました。
釣り人たちはすぐに沿岸警備隊へ通報し、当局の調べでそれがコカインであることが判明します。その量は30〜50キロ。路上価格に換算すると75万〜100万ドル、日本円で1億円を超える額でした。
しかし、この周辺では当時「シイラがやけに釣れる」と評判だったそうで、実は何人もの釣り人が集まっている海でもありました。
ところが、彼らは黒い漂流物が麻薬などと思わなかったというか、魚が釣れまくるせいで、ソレがなにか気にする暇もなかったとも言われます。
なので、釣り人達は「やけにシイラが釣れる黒い漂流物」くらいに思っていたのですが、のちにそれが100万ドルのコカインだと知って地元のアングラー達は驚きを隠せなかったようです。
しかし、フロリダ以下の南米に接する海域において、こうした事は実は珍しくないのです。
就任したばかりの女性市長が110万ドル相当のコカインを釣り上げる
事件が起きたのは2023年の夏、フロリダ・キー諸島。市長は家族とともにバケーションを楽しんでいました。海と太陽、リゾート気分に浸りながら「ちょっと魚でも狙ってみよう」と竿を出したのが運命の分かれ道です。
海上を漂う黒っぽい塊を見つけた市長一行は、最初は「ゴミかな?」と思ったそうです。釣り人なら誰もが経験する“謎の漂流物”です。しかし近づくにつれて、それがただのゴミではないとわかりました。
包みを引き上げるとずっしりと重い。袋を開けると、中から現れたのは白いブリック状の塊。数えてみれば25個、総重量は70ポンド(約31.7キロ)。麻薬捜査に携わった経験を持つキャスター市長は、すぐに「これはコカインだ」と直感したそうです。
普通の人ならパニックになってもおかしくありませんが、そこは元警察官の市長。
麻薬事件の捜査なども行ってきた人物だけに、かなり冷静に対応したとのこと。
こうした麻薬に付けられているカルテルのGPS装置にも気を配り、速やかに当局へ通報しました。その後、米国税関国境警備局(CBP)が現場に到着し、コカインの回収を行いました。
この発見はニュースとなり、アメリカ中で大きな話題を呼びました。就任したばかりの女性市長が釣ったのは魚ではなく、街中価格で110万ドルもの価値を持つ麻薬。フロリダの海は、観光客にリゾート気分だけでなく、麻薬カルテルの落とし物までプレゼントしてしまったのです。
フロリダや南米での釣りではコカインが釣れることが良くある
このような事件は1つや2つではなく、年に何度も起きると言われているフロリダ州。
しかも、実際に警察に通報しないケースもあるので、本来はさらに多くのコカインが釣り人によって発見されているとも考えられます。
こうした事件が多発しているのは、80年代より起きている南米地域からアメリカはフロリダ州へと密輸される海上麻薬ルートのせい。
「麻薬戦争」として知られる南米のカルテルたちの海上密輸ルートは様々ですが、彼らは事前に取り決めた場所へとコカインの袋にGPSを取り付けて投下することが多いのですが、当然回収に失敗するものもあれば、検閲を逃れるため、途中で海の中に捨てるコカインも大量にあります。
これらを発見するのがフロリダ周辺の漁師や釣り人達であり、メキシコに接する海沿いでは、まるで映画みたいな出来事が日常茶飯事で起きていると言われます。
ただ、こんな事になっているのも、80年代から続く麻薬戦争がいまだ止まらないからであり、そこには非常に危険で凶暴なカルテル達が関わっているから。
なので、見つけたコカインを奪おうなどと考えているとロクなことにならないので、即警察に通報しましょう。
実は魚も麻薬中毒になる
では、コカインなどの麻薬は魚に一体どういう影響がでるのか?
どうしてコカインの入った漂流物に魚が異常なほど集まっていて、それらの魚は狂ったように飛び跳ねていたのか?
というと・・・じつは魚も人間と同じように、コカインによってハイになり、その結果麻薬中毒になる可能性はとても高いようなのです。

コカインやメタンフェタミンなど、多くの麻薬はアドレナリンを増加させます。そして神経を活性化させドーパミン報酬系回路に影響をあたえるのですが、これは人間以外の動物でも同じような効果が出ることがわかっており、魚類も同じように麻薬によりハイになり、薬物の効果が切れると、薬物を接種するために薬物入の水へと戻ってくるというのです。
つまり、密閉されていたはずのコカインの容器が敗れ、海中に少量でも漏れていたとしたら、そこに魚が集まり、狂った踊りをしながら離れなくなる可能性は十分にある。
つまり、フロリダ沖にはコカイン中毒のシイラが大量に生まれていたのかもしれませんね。

