『The world is a fine place and worth fighting for』
直訳すれば「世界は美しい、戦う価値がある」
これはアーネスト・ヘミングウェイの小説「誰がために鐘は鳴る」に書かれた一節。
誰がために鐘は鳴るはスペイン内戦を戦った男のカタルシスに満ちた世界が美しく力強いという評判だが、僕の評価は違う。
なんせ、ムダに死ぬことが美しいなんて思ったことはない。
主人公が作戦に意味がないとわかっても橋を爆破し自滅するのだが、それがまったく理解できない。いったい美しさのために戦うことになんの意味があるのかまるで理解できない。
だから僕は、デビット・フィンチャー監督の「セブン」の次のセリフが好きだ。
「The world is a fine place and worth fighting forI agree with the second part」
「世界が美しいとは思えない、けれども、戦う価値はある。後半部分は賛成だ」
戦う価値があるが、世界のためなんかではない。世界は恐ろしくも醜いからこそ、生き残るために、自らを守るために戦う価値があると言われるとしっくりきまきます。
というわけで、世界はクソでも僕は生き残りたい昨今、今月も金欠と戦うαトラウトです。
もちろんこの年になれば誰もが気が付くのが「世の中美しいわけがない」ということ。
美しいのはほんの一部。ジョークでも言わなきゃ人生なんて誰も生きていけないような世界だってこと。
そんな少ないお小遣いをやりくりして釣り道具を補充している僕に、とある悲劇が怒ってしまいました。
中古で買った激安ロッドが折れてしまった
ものの見事に真っ二つ。
辛い。辛すぎる
僕の世界観が映画セブンの後半くらいトラウマレベルになってる。
聖書になぞらえて6人くらい殺されたあと、最後の一人が自分だってことに気が付いた位辛くなってる。
でもね、僕は死なないわけですよ。
どんなピンチであろうと絶対にあきらめない生存本能が、今回訪れたピンチで改めて開花したのです。
激安中古ロッドがぱっきり折れた
突然ですが、先日に56ulの中古ロッドを購入したわけですが
そのロッドが思いきり折れました。
なんということでしょうか。
匠の手により、あれほど見すぼらしかった中古ロッドが劇的に変化。
みるも美しい鋭角的なデザインに変化したのです。
持ち主のαトラウトもこれには大喜び。
これからの釣りライフがより楽しみに
なるわけがない
むしろ絶望しかない。
絶望が折れたロッドの間からにじみ出てている光景を前に僕は強くおもいました。
そう、世界は美しくなんてない。
ヘミングウェイも、ルイアームストロングも、ついでに様々な作品に登場する「世界は美しい」という言葉は僕の視界には殆ど存在しないのです。
あるのは、この無残に折れたロッド。
なにが世界が美しいですか、美しいなんてわけがない。
しかしまだ心は折れていない。
いや、僕の心が折れたとしても、人は戦える。
生き残るために、釣りをするために。
折れた心ごとこいつを修理するのです。
だって、世界は美しくないから!
1000円のロッドを修理するという名の戦い
実はこの中古ロッド、購入価格はなんと1000円。
そもそも、そんな1000円で買えるような無名ロッドですから折れて当然。
なのですが、結局は安物買いの銭失い。
がしかし、次のロッドを手に入れなければ小渓流用のロッドが無い。
これがとてつもなく痛い。
映画セブンで言ったら最後に箱の中身見せられたあの時位胸がえぐられる。
そんなわけにはいかない。心の中のケビンスペイシーに負けてはいけない。
とにかく。
とにかくですよ。
小渓流用ロッドが折れてしまったわけで、こいつはいよいよ壊れないロッドを購入しなければと、まずはアマゾンをチェックし、再び安物ロッドを購入。
しかし、届くまで数日は掛かるわけで。
ここ最近、ついにアメマスさんが遡上してきた天塩川水系でファーストアメさんを小渓流で釣るためのロッドが無いのはつらい。
ということで、ともかく折れた心と共に、このぺっきりヘシ折れたロッドを修復することを試みたのです。
ロッドの修理を試みるためグラスファイバーを入手
ロッドの中心部分から見事にぺっきり折れてしまったこのロッド。
普通なら修復はまず不可能。
なので諦めるのが当然、というかそんな努力は必要ない。
ですけど、ですよ?
このロッドを実験台に、僕はかつて考えたある計画を実行することに。
それは『グラス素材での継ぎ足し』というもの。
柔らかすぎたり、硬すぎたロッドの継ぎ目にグラス素材を足すことでアクションを変えるというクレイジー過ぎる魔改造。
この計画を実行するべく、中古ロッドを題材に実験することにしたのですが、もちろん被験者である患者からの同意は得ていません。もし失敗したら確実に裁判沙汰にされること間違いありませんが、その時はその時位の白い巨塔イズムで頑張っていこうと思います。
ダイソーで園芸用の支柱からグラスファイバーを抜く
まず準備すべきは、折れたロッドの支柱となるべきアイテム。
というわけでダイソーに走り買ってきたのがこちら、園芸用支柱です。
いやいや支柱っていっても園芸用じゃないの?
と思われているかもしれませんが、落ち着いてください。
実この園芸用支柱の中には、なんとあのグラスファイバーが入っているのです。
グラスファイバーといえば、鱒レンジャーでおなじみのあの材質。
本来なら専門店から購入するしか手に入れようのないこちらのアイテムが、なんとダイソーの園芸用品コーナーにあると誰が気が付くのか。七つの大罪になぞらえた事件を解くよりも高度な推理力が必要です。
ですがαトラウトは別に推理したわけでもなく、実はだいぶ前に釣り竿ビルダーの方のblogで園芸用支柱を使ったワカサギ用グラスロッドの作り方を見ていたのです。
(かなり昔に見たのでサイトがわからず被リンク渡せないですが)
で、これを渓流用ロッドの修復にも使えるのではないかと思ったわけで。
家に持ち帰り、ダメ元で折れたロッドと格闘することにしました。
中に入っていたグラスをむき出しにする
まずは園芸用支柱のビニール部分をはぎとります。
かなり簡単で、一部をカッターでそぎ落としてやれば中から白いグラスファイバー素材がでてきます。
太さはなかなか、耐久性もかなりのもので、そのまま削れば鱒レンジャーになりそうです。
中の白いグラス繊維をすべて出したら、続いて任意の長さでカット。
グラス繊維はなかなか固い上、ソリッド(中身が詰まった状態)なので切るのはかなりの力がいります。
ただし、糸鋸を使えば簡単。
切る時には細かくなったガラス繊維がちらばるので、下にビニールをしいたほうが良いです。
削ったグラス繊維が刺さるので注意すべし
さらにここでアクシデントが。
グラスを削っていると、その繊維が手に刺さるのです。
痛い。
なにこれ?
なんでこんな手が痛いの?
と思いすぐさま手を洗ったのですが、考えればすぐにわかること。
なんせグラス素材はガラス繊維の集合体。
それを削れば、ガラス繊維がばらまかれ、それが手に刺さってしまうのは必然。
というわけで、ゴム手袋や作業用手袋を使うなどして手をガードしたほうが良いです。
削ってロッドの切り口に合わせる
続いてグラス繊維を削り、折れたロッドにはまるように細くしていきます。
ここではカッターと紙やすり(200番)を使って削っていきます。
グラス繊維はかなり削りやすいアイテムで、まるで木でも削るように繊維がはがれていきます。
下側のロッドにはまったら、続いて上側も削ります。
削り過ぎると元に戻らないので、常にサイズを確認しながらグラスを削ります。
接着剤でくっつけてみる
折れたロッドの上下にきっちりとはまったのを確認。
続いて接着剤でくっつけていきます。
使ったのはもちろんアロンα。
これをグラス繊維の両端につけて、折れたロッドにはめこみます。
で、これでもかなりの強度なんですが、やっぱり不安なので両端に糸をまきつけ、そこも接着剤で固定。
こんな具合で、ガイドを装着する要領で糸をまき、そこに接着剤を付けて固定。
これで強度はさらにアップしました。
で、なんかこのままだとロッドが白いし見た目も悪いし。
それにロッドが伸びたのでガイドが少し足りないし。
ということで、まずはグラス部分を塗装。
そしてあまっていたガイドを装着。
このように真っ黒になりました。
グラスファイバーは繊維に塗料がしみこむので、塗装ハゲはあまり心配ありません。
ベースも白なので、油性塗料なら何色にでも塗装できるようです。
ロッドの修理がとりあえずできた
というわけで、無謀にも挑んだはずの折れたロッドの修理ですが、あんがいあっさりと完了しました。
出来栄えは美しいとはいえないですけど、真っ二つに折れたロッドでも、グラス素材をはさんでやれば復活することがわかりました。
強度は思ったより頑丈。
まずグラスのほうが折れる心配なさそうですし、室内で10リットルのペットボトルを吊り上げるテストをしたのですが、見事耐え抜いてくれました。
これは案外使える方法かもしれません。
そうえいば、今回買ってあまったグラス素材があまっています。
もしかして、加工したらグラスファイバーのソリッドティップになるんじゃないかと画策。
実はもう一本、ティップ部分が折れた古いロッドがあるんで、それをカーボン+グラスの食い込み重視のロッドに仕上げても面白いかもと思いました。
とりあえず、ダイソーにある園芸支柱の中にはグラス素材が眠っているので、竿の修理や加工でグラスが欲しかったら、買いにいってみると良いですよ。
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