本日はヤツメウナギを渓流で見つけてきました。
ヤツメウナギは北海道の淡水域に住む生物でもかなり変わった生き物で、もはや魚ですらない古代魚の一種。近年では数の減少が叫ばれており、僕の住む地域の川でもあまり姿を見ることはありません。
一方、人間界の格差が生んだ絶滅危惧種の貧乏人。にもかかわらず、なぜだか一向にレッドリスト入りもしなければ保護もなし。誰か助けて系アングラーのαトラウトです。ヘルプ!
さっさと国に保護を求めたい所ですが、人間の亜種はこの世でもっとも価値が低いのか、今だ養殖されることは無し。社会の荒波にもまれながら生存闘争を強いられる毎日。
そんな疲れから、常に釣りという癒しを求めてやまないわけで、この日も朝の渓流にでかけてきました。
ヤツメウナギがいる渓流
というわけでやってきた朝の渓流。
訪れたのは源流に近い場所です。
それにしても、やっぱり渓流は癒されます。
風景を見るだけで気持ちい良いですしね、非現実的な世界。というか、異世界に近い。
というわけでクソみたいなリアルを今日とて忘れるために、鱒レンジャーと17セドナで釣りあがっていくことにします。
鱒レンジャーもかなり使いこなせてきましたし、17セドナもだいぶ性能がわかってきました。
今日使うのはスプーン。
以前スプーンを1日使い倒した時に、改めてこのルアーの面白さに気が付いたというのも理由ですが、最近妙に魚の活性が悪いというか、ミノーのチェイスを諦めるシーンを良く見るのです。
なので、ミノーよりもスローに攻めれるスプーンを使うほうが釣果も出やすいので、基本的にはスプーンを。時々ミノーを使う感じ。
というか、ミノーロストすると心臓に悪いですからね。
こんなに美しい景色の中でもいまだ現実から抜け出せていない、これがαトラウトという亜種が絶滅しそうになる原因です。
しかし、それでも生き残るためには何がなんでも癒されるしかない。
ストレス地獄から抜け出すための渓流釣り。
とにかく現実を忘れ、この楽園を歩くことに夢中になります。
スプーンに小さなヤマメが3匹ほどヒット。
かなり小さいので、ネットも使わずにリリースを繰りしつつ渓流をさかのぼっていきます。
上を見上げると、まだ夏の緑が濃いと思っていた場所が茶色くなっている。
紅葉でした。
もうそろそろ秋がやってくるらしい。
夏というのに海にもいかず、仕事から逃げるために渓流で釣りをし続けていたボンクラな毎日を送っている間に、もう季節が変わろうとしていました。
ヤツメウナギを発見
釣り上がる最中、とある渕を攻めていたものの魚の反応は無し。
今日は釣果がいまいちだけど、それよりも景色がキレイだし、良い運動にもなるわけで、ここまで休みなく夢中で写真を撮りながら上り続けきた僕は、いよいよ休憩しようと腰を下ろしたわけです。
で、缶コーヒーを飲んでいると、渕の隣にできていた水たまりに目がいきます。
前日の台風の増水で出来たものなんでしょうが、その中にでウネウネと動く妙なものがいるじゃありませんか。
「なんだ・・・なんかすごいのいる」
と、コーヒーのキャップを締め、ネットをもって近づいてみます。
最初はドジョウでもいるのかと思ったのですが、それにしては動きが速い。
しかも土の中に潜ろうと体を動かす様はクネクネとしていて、魚というより小さなヘビ。
なんだこれ・・・初めて見る。
と、好奇心にかられてネットで泥ごと救い、リュックの中から最近使いはじめた簡易水槽を取り出し、その中に入れてみました。
水槽の中に入れたとたん、クネクネと高速で動きまくる魚。
いや、これ魚なのそもそも?とみていると、すぐに泥の付近に身を隠しはじめました。
ようやく落ち着いたその姿を見て、頭部の横に7つの穴が並んでいるのを発見。
そこで気が付きます。
これ、ヤツメウナギじゃん。
しかもたぶん、スナヤツメじゃん?
ヤツメウナギさん登場
(画像参照元:https://zukan.com/shubuto/internal192)
今回渓流で偶然発見したのはヤツメウナギの仲間であるカワヤツメか、スナヤツメの幼魚だと思われます
僕自身はじめてみましたし、素人判断なのでヤツメウナギのどの種類かは判別が難しい。幼生の見分けかたなんかまったくわからないんです。源流に近い上流域にいたので、もしかしたらスナヤツメかも。
もしそうだとしたら、かなりの幸運。
なにせスナヤツメは、ヤツメウナギの中でも最も貴重とされている種だからです。
正体不明の吸血生物
調べたところ、ヤツメウナギは厳密には魚の仲間ではないとありました。
なんだか非常にややこしい生物なんですが、食性も意味不明。
幼生のころは藻などを食べているそうなんですが、成体になると突然魚の体にとりつき、そこから肉を溶かして血液を吸い取り栄養にする吸血鬼と化すとか。
なんでそんな奇妙な能力を持ったのかわかりませんが、ともかく川の中に生きる生物としては特別の異彩を放っています。
ヤツメウナギは絶滅危惧種
スナヤツメをはじめとするヤツメツナギは絶滅危惧種としてレッドリスト入りしている生物として有名です。
元々川に沢山住んでいたらしんですが、河川の工事によって生息域がどんどんと狭まり、今では殆ど見られなくなってしまったとか。
ただ、僕がよく行く天塩川水系では1度だけカワヤツメの成体を見ました。
サイズも大きく、ウネウネと泳ぎながら上流を向かっていて、見た目はまるでウナギ。
でも、今回のように渓流の上流部で、砂の中から幼生のヤツメウナギを見つけたのは初めてです。
ヤツメウナギは渓流という修羅場を生きている
今回の渓流は、僕にとっては新しい発見をもたらしてくれました。
それに景色も素晴らしくて、釣りをしなくてもまた来たいと思えるような場所。
非現実的であって、まるで異世界のような美しさ。
ただ、魚たちにとっては、ここが現実なんですがね。
とくに魚ですらないヤツメウナギにとって、渓流は非常に厳しい場所らしく、自分が絶滅危惧種だとわかっているのか、水の中に戻すとすぐさま砂の中へと隠れていきましたが、その気持ちもわからなくはありません。
僕も人間社会では異物のようなもの。毎日はストレスばかりで、退屈で苦痛しかない日々から逃げ出し、あの幼生のように砂の中に潜っています。
だからもし、僕がヤツメウナギで、渓流の世界にいたら、きっと僕と同じことを考えると思う。
「なにがパラダイスだよ、こっちなんか大半砂の中に隠れてるんだぞ?ぜんぜん美しくなんかないわ」とか。まるで田舎に住んでいる僕が、都会の知人に文句を垂れるかのように。
いや、そんな愚痴をこぼしているのは、ヤツメウナギだけじゃないかも。
どんなに綺麗に見える場所でも、やはり生きるのに必死すぎて辛いこともあるなら、ここも魚たちにとってはリアルな修羅場かもしれません。
だとしたら?
結局、僕が毎朝やってきているこの場所の美しさはみせかけなのか?それは人間である僕には一生わからないことのように思えます。
それに、僕みたいな貧乏で卑屈な人間が考えるべきことじゃない。
僕はただの釣り人。魚を釣ることだけ考えてればいいし、そういうのは学者の先生とか、もっと素晴らしい人間がやること。僕みたいな人間は、ただ癒されていれば良いんだと言い聞かせ、痩せた頭で考えたコースを安物のロッドでキャスト。
でも、投げたルアーが吸い込まれた瀬の中。わずか水深30㎝の異世界が本当はどんな場所なのか考えながら、0.6lbのPEラインを通して探り続けていました。
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